政略結婚ですが、身ごもったら極上御曹司に蕩けるほど愛されました
 真っ赤に染まる柚子の耳を甘噛みしながら翔吾が囁く。そして再びパジャマに手がかけられる。
 柚子はもうそれを止めることはできなかった。
 頬に、額に、唇に、そして首筋には吸い付くように、彼の唇が柚子を辿る。柚子の形を確認する。
「あ、ああ……ん、ん」
 容赦なく繰り返される甘い攻撃に、柚子はなすすべもなく、目を閉じてただ熱い息を漏らすのみである。
 荒い息と、漏れ出る声と、衣ずれの音が、夫婦の寝室を甘美な空気で満たしてゆく——。
「綺麗だ」
「っ……!」
 潤んだ瞳で柚子は荒い息を吐く。
 肌触りのいい薄いグリーンの布は、柚子の脚にからまって、もはやその用を成していない。
 ほとんど生まれたままの姿で、両脇についた彼の腕の檻に、柚子は閉じ込められていた。
「柚子、綺麗だよ……」
 あやしい色を帯びた、彼の視線とその声音に、柚子は身をよじらせる。
 そんなことありえないと思うのに、まるで真実のように感じてしまう。
 柚子の中のまともな部分は消え去って、彼の言葉だけを信じたくなる。
「柚子……」
 翔吾の指が、そっと柚子の肌に触れる。
「んっ……!」
 柚子は身体をしらなせた。
「愛してるよ、柚子。どうか俺に、柚子を、柚子の身体を愛させてくれ」
 愛おしい人のその甘美なお願いに、柚子は身体を震わせて吐息だけで応えた。
< 107 / 108 >

この作品をシェア

pagetop