政略結婚ですが、身ごもったら極上御曹司に蕩けるほど愛されました
結婚はしていなかったとはいえ、翔吾はそれまで沙希との婚約を破棄したいなどと言ったことはなかった。
柚子の目に、ふたりは仲睦まじく映っていた。
だったら彼はまだ姉を好きなのかもしれない。
それなのに柚子はその彼に"家のために"と結婚を強いたのだ。
柚子の中で、生まれてはじめて、自分の中のわがままな気持ちを貫いた瞬間だった。
『……わかった』
翔吾のそのひと言で、ふたりの結婚が決まった。
「生花はやられるの?」
ぼんやりと良子の作品を眺めていた柚子は声をかけられてハッとする。
振り返ると着物姿の女性がニコニコとしてそこにいた。
「あ……」
柚子はとっさに、"えぇ、たしなむ程度ですが"とあたりさわりのない、このような場に相応しい言葉を口にしようとする。
けれど目の前の女性の優しげな瞳を見つめて、少し考えてから、ゆっくりと首を振った。
「いえ、今は全然。お花はすごく好きなんですけど、以前生花を習っていた先生がすごく……厳しい方で、才能がないと叱られて、……やめてしまいました」
柚子の目に、ふたりは仲睦まじく映っていた。
だったら彼はまだ姉を好きなのかもしれない。
それなのに柚子はその彼に"家のために"と結婚を強いたのだ。
柚子の中で、生まれてはじめて、自分の中のわがままな気持ちを貫いた瞬間だった。
『……わかった』
翔吾のそのひと言で、ふたりの結婚が決まった。
「生花はやられるの?」
ぼんやりと良子の作品を眺めていた柚子は声をかけられてハッとする。
振り返ると着物姿の女性がニコニコとしてそこにいた。
「あ……」
柚子はとっさに、"えぇ、たしなむ程度ですが"とあたりさわりのない、このような場に相応しい言葉を口にしようとする。
けれど目の前の女性の優しげな瞳を見つめて、少し考えてから、ゆっくりと首を振った。
「いえ、今は全然。お花はすごく好きなんですけど、以前生花を習っていた先生がすごく……厳しい方で、才能がないと叱られて、……やめてしまいました」