政略結婚ですが、身ごもったら極上御曹司に蕩けるほど愛されました
 ふたりの会話を聞きながら、柚子は気が遠くなるほどの衝撃を受けていた。
"そんな嘘をつく相手と結婚できるはずがない"
 至極真っ当なその意見が柚子の胸に突き刺さった。
 昨夜も今朝も柚子は翔吾の誤解を解くことができなかった。
 起きて待っているつもりだった昨晩は、なぜか眠ってしまったし、今朝は寝坊をしてしまった。しかもはじめて"いってきますのキス"をされて、目を丸くしているうちに彼が出かけてしまったからだ。
 でもそれは言い訳にしかならないのだ。
 翔吾が柚子の妊娠を誤解をしてから、もう少しで丸一日、今から誤解を解いたところで、彼からしてみれば、大事なことで柚子に嘘をつかれたことには代わりはないだろう。
 目の前が真っ暗になった。
 今すぐに彼の誤解を解かなくては。
 もちろん仕事中の彼の携帯をこんなことで鳴らすわけにはいかないから、今夜こそは絶対に。
 でも……。
< 41 / 108 >

この作品をシェア

pagetop