政略結婚ですが、身ごもったら極上御曹司に蕩けるほど愛されました
 翔吾が少しだけ安堵したように息を吐いた。
 繋いだ手にギュッと力が込められる。
「なにかあったらすぐに連絡してくれ。何時でもいいから。……実家のお義母さんに来てもらうか?」
 その言葉に柚子は慌てて首を振った。
「い、いいよ! そんなの。大丈夫!」
 本当に妊娠しているわけじゃないのに、そんなことできるはずがない。
 でもそういえば、とある大事なことに気が付いて、口を噤む。そして恐る恐る彼に向かって問いかけた。
「あの、翔君……、この話、もしかして誰かに話したりした……?」
 もしそうだったら目もあてられないと柚子は思う。自分は翔吾を騙しただけではなく、彼に恥をかかせることにもなってしまうのだ。
 そうなったらなにをどう言い訳しても、もう絶対に許してもらえないだろう。
 こくりと喉を鳴らして、柚子は翔吾をジッと見つめる。すると幸いにして彼は、首を横に振った。
「いや、誰にも。周りの人に話をするのは、柚子と相談してからだと思って」
「よかった……」
 柚子はホッと息を吐いた。
 翔吾がフッと笑みを漏らして、柚子を安心させるように大きな手で頭を撫でた。
「こういうことは柚子の心と身体が最優先だからな。俺がなにかする時は全部柚子に聞いてからにするよ。だから柚子も自分の身体を最優先にするんだぞ」
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