政略結婚ですが、身ごもったら極上御曹司に蕩けるほど愛されました
「明日、丸一日休みなんだ。もし柚子の体調に問題なければ、出かけないか」
「出かける……? どこかからお呼ばれしているの?」
 反射的に柚子はそう彼に尋ねた。
 仕事関係か、親戚か、妻同伴で出席しなければいけないような予定が入ったのかと思ったからだ。
 でもその問いかけに翔吾は首を振った。
「いや、そうじゃなくて、仕事は完全に休みだから、ふたりでどこかへ行こうかってことだよ」
「仕事じゃないのに……?」
 柚子は呟いて首を傾げた。
 彼の仕事関係や親戚関係の予定でふたりで出かけることはよくあるけれど、そうでもないのにふたりで出かけるということがとても不思議なことのように感じられた。
 翔吾と柚子はいわゆる交際期間というものはなかったから、デートはまだ一度もしたことがなかった。
 戸惑う柚子の手を温かい翔吾の手が包んだ。
「柚子に行きたいところがあればそこでもいいし、……もしないなら、臨海公園へ行かないか」
「臨海公園……?」
 呟いて柚子は目を見開く。
「そう」
 翔吾が頷いた。
 臨海公園はふたりの"初デートの場所"だった。
 もちろん、ふたりで行ったことはない。そういう設定になっているということだ。
 きっかけは結婚式の打ち合わせの席でプランナーから問いかけられたひと言だった。
『おふたりの初デートの場所はどこですか』
 その何気ない質問に柚子も翔吾もすぐには答えられなかった。
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