政略結婚ですが、身ごもったら極上御曹司に蕩けるほど愛されました
そしてそのあと、これからのふたりのことを話し合おう。
「わかった。なるべく早く帰るようにするよ」
電話の向こうで少し考えてから翔吾が言う。
柚子は安心して電話を切った。
そして小さくため息をついた時、また携帯が鳴った。
今度は実家の母親からの着信だった。
「はい」
「柚子今いい? 体調はどう?」
翔吾と同じようなことを母は尋ねる。だがこれは、少し前に柚子が体調を崩していたことを受けての問いかけだ。
「大丈夫、あれから熱も出ていないし」
本当は食欲だけは戻っていないけれど、母を安心させるために柚子は言う。
電話の向こうで、母が安堵のため息をつく気配がした。
「じゃあ明日、出てこられる?」
「明日?」
「そう、実は沙希が帰国してるのよ」
「お姉ちゃんが⁉︎」
柚子は思わず声をあげる。
でもソファにいるクロがぴくりと身体を震わせたことに気が付いて慌てて声を落とした。
「いつ帰国したの?」
「それが、昨日の夜遅くらしいのよ。いつもいつもあの子には驚かされるわ。困った子」
ため息をついて母親は言う。でも、本当に困ったという様子ではなかった。
翔吾との婚約を破棄した後、姉は形の上では両親から勘当された。
でもそれはたくさんいるうるさい親戚との関係上そうせざるを得なかっただけで、今も両親は彼女と連絡を取っている。
久しぶりに大好きな姉に会えると知って、柚子の胸はひとりでに踊だす。
「明日、会えるの?」
尋ねる声も自然と弾んだ。
「そう、あまり長く日本にいないらしいけど、明日なら会えるって言うのよ。今プライマリーホテルに泊まっているらしいわ」
「え、プライマリーホテルに……?」
ついさっきの電話で、聞いたばかりのそのホテル名に柚子の胸がツキンと鳴った。
「そう、確か柚子のマンションからすぐ近くのホテルよね。だったら今夜にだって会えそうなものなのに、今日は人に会う予定があるからダメなんて言ってて……」
母の声をどこか遠くに聞きながら、柚子の頭の中は嫌な考えでいっぱいになっていく。
単なる偶然だろうという言葉は、黒い不安にかき消された。
「わかった。なるべく早く帰るようにするよ」
電話の向こうで少し考えてから翔吾が言う。
柚子は安心して電話を切った。
そして小さくため息をついた時、また携帯が鳴った。
今度は実家の母親からの着信だった。
「はい」
「柚子今いい? 体調はどう?」
翔吾と同じようなことを母は尋ねる。だがこれは、少し前に柚子が体調を崩していたことを受けての問いかけだ。
「大丈夫、あれから熱も出ていないし」
本当は食欲だけは戻っていないけれど、母を安心させるために柚子は言う。
電話の向こうで、母が安堵のため息をつく気配がした。
「じゃあ明日、出てこられる?」
「明日?」
「そう、実は沙希が帰国してるのよ」
「お姉ちゃんが⁉︎」
柚子は思わず声をあげる。
でもソファにいるクロがぴくりと身体を震わせたことに気が付いて慌てて声を落とした。
「いつ帰国したの?」
「それが、昨日の夜遅くらしいのよ。いつもいつもあの子には驚かされるわ。困った子」
ため息をついて母親は言う。でも、本当に困ったという様子ではなかった。
翔吾との婚約を破棄した後、姉は形の上では両親から勘当された。
でもそれはたくさんいるうるさい親戚との関係上そうせざるを得なかっただけで、今も両親は彼女と連絡を取っている。
久しぶりに大好きな姉に会えると知って、柚子の胸はひとりでに踊だす。
「明日、会えるの?」
尋ねる声も自然と弾んだ。
「そう、あまり長く日本にいないらしいけど、明日なら会えるって言うのよ。今プライマリーホテルに泊まっているらしいわ」
「え、プライマリーホテルに……?」
ついさっきの電話で、聞いたばかりのそのホテル名に柚子の胸がツキンと鳴った。
「そう、確か柚子のマンションからすぐ近くのホテルよね。だったら今夜にだって会えそうなものなのに、今日は人に会う予定があるからダメなんて言ってて……」
母の声をどこか遠くに聞きながら、柚子の頭の中は嫌な考えでいっぱいになっていく。
単なる偶然だろうという言葉は、黒い不安にかき消された。