政略結婚ですが、身ごもったら極上御曹司に蕩けるほど愛されました
「私、翔君の気持ちを知れただけで……それだけで……」
 首を振りそう言うのが精一杯の柚子の目から涙が溢れ出し、熱く頬を濡らしてゆく。
 そう、あるのはただふたりが想い合っていたという、柚子にとってこれ以上ないくらいの幸せな幸せな真実だけ。
 もうそれだけでいいと、確信を持って言い切れる。
「柚子……‼︎」
 熱く名を呼ぶ声とともに温かい腕に包まれる。大好きな彼の香りに柚子は顔を埋めた。
「俺たち、本当にここからやり直そう。柚子と俺と、それからお腹の子と皆で幸せなるんだ。俺がふたりとも絶対に幸せにする。なにからも守るよ」
 力強い言葉が柚子とお腹の子を包み込む。
 目を閉じると、三人だけが存在する幸せな世界が広がっていた。
「翔君、大好き、大好き……」
 もう記憶にないくらいずっと前から胸の中にあるその想いが、柚子の口から溢れ出す。
 今まで、言いたくても言えなかった。だからこそ、もう止めることができなかった。
「柚子、愛してる。愛してるよ……愛してる」
 翔吾もまた同じだった。
 離れていた心の距離を埋めるように、ふたりはぴたりと身体を合わせて、互いに自らの想いを伝え合った。
「柚子」
 名前を呼ばれて顔を上げると、すぐそこにあるのは柚子が大好きな彼の眼差し。その瞳が、自分だけを映していることに柚子は震えるほどの喜びを感じた。
「翔君」
 焦がれるように柚子は求める。その想いに応えるように翔吾の唇が近づいた。
「ん……」
 もう何度も交わしたはずなのに、その口づけはまるではじめてのような心地がした。
 熱くて荒い彼の息が、どこか傍若無人な仕草でなにかを求めて柚子の中に入り込む。
 もうすでにすべてを知っているはずなのに、まだ足りないとでもいうように柚子の中で暴れ回る。
「んんっ……!」
 はじめての衝動に柚子は身体を震わせる。
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