政略結婚ですが、身ごもったら極上御曹司に蕩けるほど愛されました
 だめだこりゃと、柚子はまたため息をつく。
 でもそれは、幸せな幸せなため息だった。
 ありえないと思っていた。
 こんなに幸せな日々がまさか自分に訪れるなんて。
 彼とこんな風に言い合える日が来るなんて。
 柚子はまた窓際のクロ親子に目を向ける。
 すべての始まりは彼女と出会ったことだった。今から思えば、妊娠してお腹を空かせていたクロは、同じように妊娠していた柚子に、なにかを感じてついてきたのかもしれない。
 仲間だと思って助けを求めたのかもしれない。
 そう考えてみると、今あるこの幸せはクロから柚子への恩返しのようにも思えた。
「クロ、私もクロみたいにいいお母さんになれるかな」
 微笑んで柚子がそう問いかけると、そこまでは知らないとでもいうように、クロがふぁ~とあくびをした。
「なれるよ、きっと」
 代わりに翔吾が囁いた。
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