空を舞う金魚
そう言って砂本さんは、名刺の裏側に自分のラインのIDを書いて寄越した。この場で連絡先を交換しようと言い出さない所が、千秋に権利を委ねている。つまり、登録しても、登録しないでも良いということだ。

「あの……」

どうしよう。IDを受け取って、登録しなかったら失礼に当たらないだろうか。おろおろと名刺と砂本さんの顔を見比べると、砂本さんがぷぷっと吹き出した。

「そんな、登録しなかったからって言って、職場でいじめたりしないよ」

気軽に考えて。同僚と交換するみたいにさ。

そう言って砂本さんは残りのコーヒーを飲んでしまうと、二次会に行くからと席を立った。千秋のことを好きだと言ってくれた人の背中を、また見送ってしまった。

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