空を舞う金魚
千秋がバスルームを出るのと入れ替わりに滝川がお湯を使い、二人そろって寝間着になって布団に寝転んだ。滝川がベッド、千秋が客用布団だ。
「そうかあ……。しかし渡瀬くんと千秋ちゃんに過去の出会いがあったのは知らなかったなあ……」
「す……っ、すみません……。渡瀬くんは、もう忘れていると思っていたので……」
渡瀬が来て楽しそうだった人たちにも申し訳ないことをした。
「うん。まあそれは本人にしか分からないことだしねえ。……それで、千秋ちゃんはどうするの?」
つまり、砂本を選ぶか、渡瀬を選ぶのか、ということだ。
「あの……、先にお声を掛けて頂いたのは、砂本さんですし……」
「えー? もっと前に渡瀬くんから告白されてたんでしょう?」
でも、あんな十年前の想いが有効だとは思わなかった。いや、千秋の心の中では時間が止まっていたけど、渡瀬の時間が止まっているとは思わなかったのだ。あの時に別れて以降、渡瀬の時は秒針とともに進んでいって、きっと千秋のことを古ぼけた卒業写真くらいにしか思い出さないと思っていた。それがあんなに真剣な瞳で見られてしまって、動揺した。植山も言うほどなのだから、やっぱりそうなのだろう。
「それにさあ?」
滝川の言葉が続く。