空を舞う金魚
「私もどっちが先に告白したかっていう切り口で話しちゃったけど、その、順番はどうでも良くて、結局のところ、千秋ちゃんの気持ち一つなんじゃないのかなあ? 義理とか人情で恋を始めるもんじゃないわ。『この人以外、考えられない』っていう、衝動みたいなものが走らなきゃ」
衝動……。どんな気持ちだろう……。千秋はこれまで静かに目立たないように過ごしてきたから、そう言う気持ちとは無縁だった。
「……滝川さんは、経験あるんですか? そういう、衝動みたいな気持ち……」
千秋が聞くと、滝川は情けない顔をして、実はね、と笑った。
「前々から気になるなあとは思ってたんだけどね。その人が他の人のことを切なそうに見てるのよ。そんな手の届かない顔してるんだったら、私の方見てよ、って、凄く思っちゃって……。まあ、横恋慕だから、千秋ちゃんには参考にならないと思うわ」
笑って諦めようとしている滝川の恋が実れば良いのにと思う。その人だって、滝川を正面から知れば、きっと滝川の魅力に気付くに違いない。
「あの、……私が言うのもおかしいかもしれないですけど、滝川さんは素敵な人ですし、きっと気持ちが届くと思いますよ……」
「ふふ、ありがとう、千秋ちゃん。そう願うわ……」
微笑んだ滝川が、電気消すよー、というので布団に入る。アルコールを初体験した千秋には、睡魔は直ぐにやってきてくれた。