空を舞う金魚
「出来る限り、僕が幸せにするね」
まるでプロポーズだ。そう思ったら不意に渡瀬の言葉を思い出して、千秋は慌てた。ふるふるっとかぶりを振り、渡瀬の残像を頭から追い出す。
「いえ、そんな……。居て下さるだけで……」
そう。砂本は其処に居てくれるだけでいい。それだけで千秋が安心出来るから。新鮮な空気で呼吸出来るから。それを上手く言えなくて、あんまり特別なことはしないでください、と頼んでしまった。
「はは、それは難しいなあ。だって、大事な恋人だからね」
恋人、なんて響きも慣れない。それでも、砂本の隣を歩きながら、だんだん慣れていければ良いなあと思った。
砂本と一緒に居たら、水槽の上の方を自由に泳げるようになりそうだった。それは楽しみなことだった。