空を舞う金魚
「今日は流石に別れ難いよ」
駅で砂本さんが改札を潜るのを躊躇っている。でも今日は家に遅くなると言ってこなかったから、夕食の準備が出来てしまっている。帰らないといけなかった。
「日曜日、帰りを早めにしていただければ、お付き合い出来ます」
「本当?」
千秋の言葉にぱっと顔が明るくなる砂本がかわいい。大人の男の人だと思っていたのに、こんなにかわいい一面があるだなんて、職場の人は知ってるのかな。
「じゃあ、ランチをして、映画でも見よう。その後カフェでもショッピングでも付き合うよ」
上機嫌で予定を立てる砂本に、良いですね、と返事をした。
「じゃあ、気を付けて帰ってね。家に着いたら連絡頂戴」
「はい」
そう言って、同じ駅の違う路線の改札を潜る。砂本さんは改札の外から千秋が見えなくなるまで手を振ってくれた。
砂本の気持ちが、嬉しかった……。