空を舞う金魚
日曜日。恥ずかしかったけど、滝川が選んでくれたセットアップを着て出掛けた。待ち合わせ場所にはやっぱり砂本さんが先に居て、目をぱちぱちと瞬かせて、かわいいよ、と褒めてくれた。
……少し、照れくさい。
でも、こういう服を着て、大切な人の隣を歩いていると、自分も金魚になれたような気になる。きらきらと光る水面を、尾ひれを優雅にたなびかせてひらひらと泳ぐ。そんな気分になれた。
映画は大人向けのラブストーリーを選んだ。別れが待っていると分かっていても、相手を愛してしまう恋人たちの話。最後の別れのシーンが切なかったけど、とても綺麗だった。ヒロインと相手役の男の人が、それぞれ納得して別れを選ぶ。相手役の男の人が日本を発つその時、ヒロインが駆けつけて永遠の愛を確かめ合う。そう言うお話だった。
「空港のシーンが印象的でした。……私には出来そうもないですけど」
そう言って笑うと、砂本も同意してくれた。
「まあ、架空の話だからね。あの境遇が自分に実際降りかかったら、僕だって手を放せるとは思えないな」
微笑んで砂本が言うから、胸の内があたたかくなる。千秋はケーキの苺をフォークに取って食べた。砂本もコーヒーを傾けて、暫く他愛のない話をしていたら、不意に、そう言えば、と言って砂本が先の予定を聞いてきた。