空を舞う金魚
*
二人して会社に遅刻して出社すると、事情を話してあった課長に気遣われてしまった。渡瀬は全然怒った顔を崩さずに千秋の隣に居てくれた。経緯は全部渡瀬が話してくれた。兎に角、未だ残る触られた感触に対する恐怖が、千秋の口を閉ざしていた。
報告も終わって席に着くと課長への報告を聞いていた砂本が飛んできて、心配してくれた。大丈夫だったかと問われても、大丈夫と応えられなくて、余計に心配させてしまった。
「渡瀬くん、ありがとうね」
砂本がそう渡瀬にお礼を言うと、千秋の様子を気にして席まで付いて来てくれた渡瀬は、
「別に砂本さんにお礼を言われることじゃないです。自分の気持ちに従っただけなので」
と返していた。
静かな火花が散っているようなその雰囲気に、千秋は渡瀬に返事を返してなかったことを思い出す。
(そうだよ。私、渡瀬くんに返事してないわ……。でも、こんな流れじゃ、返事もしにくい……)
でも、ずるずると先延ばしにしても良いことはないだろう。今日、渡瀬と話す時間を作ろう、と千秋は思った。
二人して会社に遅刻して出社すると、事情を話してあった課長に気遣われてしまった。渡瀬は全然怒った顔を崩さずに千秋の隣に居てくれた。経緯は全部渡瀬が話してくれた。兎に角、未だ残る触られた感触に対する恐怖が、千秋の口を閉ざしていた。
報告も終わって席に着くと課長への報告を聞いていた砂本が飛んできて、心配してくれた。大丈夫だったかと問われても、大丈夫と応えられなくて、余計に心配させてしまった。
「渡瀬くん、ありがとうね」
砂本がそう渡瀬にお礼を言うと、千秋の様子を気にして席まで付いて来てくれた渡瀬は、
「別に砂本さんにお礼を言われることじゃないです。自分の気持ちに従っただけなので」
と返していた。
静かな火花が散っているようなその雰囲気に、千秋は渡瀬に返事を返してなかったことを思い出す。
(そうだよ。私、渡瀬くんに返事してないわ……。でも、こんな流れじゃ、返事もしにくい……)
でも、ずるずると先延ばしにしても良いことはないだろう。今日、渡瀬と話す時間を作ろう、と千秋は思った。