空を舞う金魚

砂本がその後千秋を連れてきたのは営業時間ぎりぎりのスカイツリーの展望デッキだった。もう見学者はほとんど居らず、ほぼ貸し切り状態になった硝子からは足元に散らばる宝石のようなライトが美しいけど、千秋はあまり景色を見ていられなかった。

玄関ホールからずっと千秋の左手を引いていた砂本は、今、夜景を目の前に砂本は黙ったままだ。いたたまれず、千秋は口を開く。

「あの……」

「……本当の気持ち、っていうのは、渡瀬くんを好き、……ってこと?」

「ち、違います……っ!」

「じゃあ、渡瀬くんは何をもって綾城さんの本当の気持ちを見てるの?」

答えられない。告白されたことを伝えてしまったら、砂本さんのアドバンテージが無くなってしまう。

弱く、砂本が笑う。
< 139 / 153 >

この作品をシェア

pagetop