空を舞う金魚

空が明けて、プログラムが終わる。砂本は結局明るくなるまで千秋の手を握っていた。砂本が千秋の方を見て来るのに、なかなか視線が合わせられない。

「綾城さん?」

「……あの……」

千秋の様子に思い当たったという感じではなく、砂本は手を離した。千秋が困っていたことを分からないんだ、と思うと、伝えることの難しさを体感した。

ふと、記憶が昔に戻る。あの時、渡瀬くんもどう千秋に気持ちを伝えたら良いか、きっと考えに考えてくれたのだろう。それでも、あの唐突過ぎた告白に、千秋は何も行動することが出来なかった。なにか予感のようなものがあれば、渡瀬の言葉にも、砂本の行動にも、対応できたのかな、と千秋は思った。

「あの……」

「うん?」

穏やかに微笑んでいる砂本は、本当に分かっていないようだった。どう伝えようかと迷って、
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