空を舞う金魚

なんて応じたら良いのか分からなくて黙って俯いていると、渡瀬くんが口を開いた。

「綾城さん、俺……」

渡瀬が何かを言おうとした時、廊下から渡瀬を見つけた逢坂が渡瀬を呼んだ。

「渡瀬。帰る前にちょっと確認しときたいことあるから、ちょっと来て」

「あ、はい」

渡瀬は逢坂を振り向いて返事をして、そして逢坂の後を追う前に、千秋にこう言った。

「またね」

また……。

渡瀬くんはあの時を繰り返したいんだろうか。あの時と同じように言葉が遮られ、宙ぶらりんになった千秋を置いて渡瀬くんが戻っていく。思い出だけを抱えて生きてきたから、その続きがあるなんて、千秋は思ってもみなかった……。

< 40 / 153 >

この作品をシェア

pagetop