空を舞う金魚
砂本との待ち合わせまでの時間潰しに、会社近くの本屋さんに立ち寄った。沢山本棚がある中で、何時もだったら気晴らしに旅行雑誌でも開くところを、今日はなんとなく情報科学の本棚のところへ来ていた。砂本たちの業務がどんなものかと思ってタイトルだけで判断して雑誌を開いてみたけど、やっぱり書いてあることは千秋では分からない。平たいことは分かるが、専門的な用語が出てくると全くちんぷんかんぷんだ。
「あれ」
そんな風に雑誌を眺めていた時に、背後から声が掛かった。振り向くと渡瀬が其処に居た。
「……お、お疲れ様、です……」
「どうしたの、こんな場所で。勉強?」
明らかに専門分野外の千秋に対する言葉だった。恥ずかしくなって雑誌を棚に戻す。
「なんとなく……、皆さんがされてるお仕事って、どんなものかなって思って……」
業務中に素人が聞くのは仕事の邪魔になるから、雑誌で理解しようと思った。そう言ったら、別に聞いてくれたら良いのに、と渡瀬に微笑まれた。