空を舞う金魚
「うちの会社のシステム開発事業部では、列車の運行管理システムを構築してて、それは鉄道業務支援サービスの一部なんだ。その発展形で、ゆくゆくは自動運行システムを手掛けるというのが今後のビジョンなんだよ」
詳しいことは分からないけど、皆の通勤通学の足を動かすシステムの大事な仕事だということは分かった。
「聞いたことある? 未来はデータの線路上にある、って言ううちの社長の言葉。俺も本当にそうだなあって思うんだけど」
でも、切り替えポイントだっていっぱいあるよね、と渡瀬は微笑った。
「だって、あの時植山が教室に入ってくるなんて『if』、思いつきもしなかった。あの日、俺は生徒会の記念行事は全部終えて教室に戻った。だからあの時、植山が入って来さえしなければ、俺は君から返事をもらえてた筈なんだ」
やっぱり渡瀬は千秋の目を射抜いて喋る。渡瀬を前にすると、一瞬であの時に時間が逆戻りする。どんなに千秋が地に足を付けて地道に時を歩んでいても、それをものともしない力が、渡瀬にはあった。