空を舞う金魚

「あの時をやり直せたらいいのにって、あれから何度も思ってたよ……。綾城さん。君は、そう思ったことは、なかった……?」

穏やかに低い声が、微笑んだ口許から零れ落ちている。あの時を何度も思い出して、何度も自分は駄目だった、と思った記憶がよみがえってくる。

「わ、私……」

「綾城さん」

言い淀んでいたら、渡瀬の更に後ろから砂本が姿を現した。砂本は渡瀬が振り向いたことに気付いて、お疲れ、と微笑んだ。

「二人でどうしたの?」

まるで渡瀬のことを疑っていない砂本がにこにこと声を掛ける。

「ちょっと、世間話してました。珍しい所に、綾城さんが居たので」

そう言って壁の本棚を指差す。ああ、と砂本も納得したようだった。
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