空を舞う金魚

昼に集まってから、もう二時間は飲んで食べて遊んでいる。山の方とは言え日差しは真上から射す。ポスターカラーの水色を溶かしたような青空に、真っ白い雲が浮いていて、こんな風に夏を感じることも随分なかったなあと感じた。

山の稜線を流れてきた風が肩の下まで伸びた髪の毛を攫う。ふわりと毛先が巻き上げられて、しっとりと汗をかいた首筋が涼しく感じた。ジーワジーワと蝉の鳴き声が川の両岸から聞こえてくる。川の淵に覆い被さっている樹々の枝先が揺れ、耳にみんなの歓声を聞きながら、身体を撫でる空気に包まれる。

……気持ちいい。学校を卒業して以来、自然の中に飛び込むことをしてこなかったから、この感覚は久しぶりの感覚だ。そうだな、記憶を辿ると高校の林間学校くらいまで遡るだろうか。あの頃から千秋は変わらない。クラスの中でも特段目立たず、誰にも注目されずに淡々と時間を過ごしていた学生時代。彩りがあるとすれば卒業式の日の、窓から見えた青い空と桜の淡いピンク色がきれいだったことを覚えているくらいだ。
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