空を舞う金魚

不意に砂本の言葉が思い出される。あの時それ以上考えることが出来なくてそのままになっていたけれど、今、渡瀬を前に、砂本のことを『男の人』として選べるだろうか……?

「……っ、……」

躊躇いが言葉を継ぐのを止める。それを知ったかのように渡瀬が言った。

「じゃあ、僕ももう一度君に交際を申し込むよ。だから、もう一度考えてくれないか? 本当に、……俺のことが嫌いかどうか……」

酷い……。嫌いだったら、こんなこと話してない。むしろ、あの時から時計が動かなくて困っているのに……。

「選べば良いだけだよ。俺か……、砂本さんか」

砂本を選べていたらこんな話はしていないし、渡瀬を選んだら砂本に申し訳ない。

< 75 / 153 >

この作品をシェア

pagetop