空を舞う金魚
「え?」
ぽつりとつぶやく声が砂本らしくなくて、千秋は砂本の方を見る。砂本が口を歪めて笑っていた。
「少しでも、綾城さんと昔の記憶を共有できる渡瀬くんが、羨ましいよ。僕にはない記憶だからね」
そんな風に羨ましがるような記憶でもない。だって、あの卒業式の日まで千秋は渡瀬と喋ったこともなかったんだから。
「……別に、学校行事の話が出来るだけで、特に共通の話題があるわけでもないですよ。渡瀬くんとはクラスも被りませんでしたし……」
「……そう」
やっぱり、砂本らしくない言葉の裏に何かを潜ませた返事。どうしたんだろうと思っていると、砂本もまた、ベンチから立ち上がった。
「片付けが済んだみたいだ。行こうか」
ごみ袋を持って立ち上がる。山の稜線に掛かり始めた午後の太陽が、砂本の後姿を光の形にかたどっていた。