空を舞う金魚

女性連れの渡瀬を見て滝川が言った。渡瀬が慌てたように弁解する。

「違いますよ。僕らこれから同窓会で……。幹事を二人でやってるんです」

渡瀬と一緒の女性は副会長の植山だった。あまりに綺麗に変わっていたので、分からなかった。

「そうだったの。幹事大変ね、お疲れ様。私たちはここのパンを買って帰ろうって言ってたところなの」

滝川がビルの、通りに面した一角を占めているパン屋の看板を指差すと、ここ美味しいですよね、と渡瀬が笑った。

「じゃあ、僕ら準備があるんで失礼しますね。綾城さん、また月曜日に」

「う、うん」

千秋がそう応えたところへ、植山が千秋を呼んだ。

「綾城さん。……少しだけ付き合ってもらっても良いかな」

有無を言わせない雰囲気が、植山にはあった。

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