空を舞う金魚
渡瀬は先に同窓会の会場へ行き、滝川とはその場で別れた。植山と千秋はビルのエントランスに設けられているフリースペースで向き合っていた。
「単刀直入に言うわ。渡瀬くんをいい加減解放してあげて」
解放? 千秋が渡瀬を解放だって? 逆だ。千秋こそが、あの渡瀬の告白以来、ずっとがんじがらめなのに
「渡瀬くん、高校時代はあんなに前を向いていた人なのに、今では過去を悔いてばかりよ。……そりゃ、あの時渡瀬くんの邪魔をした私も悪いわ。でも、もう十年よ? いい加減、切り替えて前を向かなきゃいけないでしょう?」
植山の言葉を聞いて、かっと頭に血が上った。植山は「邪魔をした」と言った。つまり、あの時意図的にあの空間に割って入ったのだ。
「うえやまさ……」
「貴女だってまさか、後悔ばっかりで過ごしてきたわけじゃないでしょう?」
植山の言葉が突き刺さる。まるで成長していないと言われたようだった。高校生だったころの植山と、今目の前に居る植山との差……、つまり変化が、自分にはない、と千秋は思った。一瞬で頭に上った熱もさあっと冷めていく。
時計のねじを巻かなきゃいけない。あの時に留まっていてはいけない。大人にならなきゃいけない。……十年も、経っているのだから。