空を舞う金魚


真夏の暑い盛りが終わり、季節は残暑へと移っていた。昼間の暑さに比べて朝夕は幾分過ごしやすくなっている。夜遅くなる日はカーディガンを持ち歩かないといけない日々だ。そんな持ち物を、渡瀬が目ざとく見つけた。

朝。エレベーターホールに差し込む太陽の光にうんざりしていると、おはよう、と渡瀬に声を掛けられた。

「綾城さん、大体この時間だね」

「渡瀬くんだってそうじゃないですか」

「もしかして電車が同じとかなのかな」

「ふふ、もしそうだとしても、こんなに人が居るから分かりませんよね」

微笑って話していると、渡瀬があれっ、と千秋の持ち物を見た。

「今日、残業?」

「えっ?」
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