偽装結婚のはずが、天敵御曹司の身ごもり妻になりました
「お店の中じゃ話しにくいかと思って連れ出してあげたのよ」


スッと目を細め、上田さんは私を睨みつける。


「櫂くんにはね、もうずっと好きな人がいるの。その人のせいで私は婚約を破棄されたの。失礼な話でしょう? 私との婚約は幼い頃から決まっていたのに」


「え……?」


「あら、知らなかったの? おめでたい人ね。私は櫂くんの妻になるためにずっと努力してきたのよ。家族も応援してくれているし、なによりふさわしいわ」


イラ立ちの滲んだ声をぶつけられ、ドクンと鼓動がひとつ大きな音を立てた。


「あなただってわかっているでしょ?」


「……それは、櫂人さんが決めることでは?」


ここで負けてはいけない。

彼は私を選んでくれたのだから。

そう自分に言い聞かせるけれど、握りしめた指先が緊張で震えてくる。


「自分の身の丈を知るのは大事よ? あなたに栗本の後継者の妻は務まらない。私なら櫂くんに有利な人脈だって紹介できるし何事も完璧にこなせる」


ガツンと鈍器で頭を殴られたような気がした。


「そうそう、斎田さんって櫂くんの想い人に外見がそっくりなのよね?」


「え……?」


「もしかしたら、せめて外見だけでも似ている人を身代わりにして叶わぬ恋を成就したかったのかしら? だとしたらお気の毒ね」


衝撃的なひと言に声がでない。

ひゅっと息を呑む。


なんてタイミング。


たった今、その可能性を無理やりねじ伏せていたのに、どうして。


上田さんはいったいなにを言いたいの?
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