偽装結婚のはずが、天敵御曹司の身ごもり妻になりました
震える指で待ち受け画面に戻す。

気持ちを押し込めて蘭子さんに電話しようとした瞬間、スマートフォンが櫂人さんからの着信を再び告げた。


「藍、出ないのか?」


「えっと……」


「――アイツか」


私の反応に貴臣くんが低い声で言い放つ。

そして車を近くの空きスペースに寄せて停車した。


「藍、スマートフォン貸して」


「え?」


よくわからないまま貴臣くんにスマートフォンを渡すと、彼は自分のスマートフォンを取り出し、なにやら操作している。


「貴臣くん?」


「藍、悪いけどちょっと待っててくれる?」


「あ、うん」


貴臣くんがなにをしているのか気になりつつも、しばらく待っていると、貴臣くんにスマートフォンを返された。

その後、蘭子さんに連絡を入れると、私の身を案じてくれていた。


貴臣くんの不思議な行動については触れることもないまま蘭子さんの自宅に着いた。


「藍ちゃん、大変だったわね」


蘭子さんは玄関前で私の到着を待っていてくれた。

貴臣くんが兄代わりなら蘭子さんはずっと私の良き姉代わりだった。

仕事のときとは違う親しみのある呼び名に張り詰めていた気持ちが緩む。
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