偽装結婚のはずが、天敵御曹司の身ごもり妻になりました
「そもそもなんで俺が白坂さんを好きだとか、未練があると思うのか意味がわからない」


「だって上田さんが……」


「綾の件は申し訳ないと思ってる。今回のネットニュースの件も恐らくアイツの仕業だ。その対応に最近は追われていた」


寂しくて不安な思いをさせて悪かった、と彼は私の頭を赤信号で停止した瞬間に引き寄せた。


「間違いなく上田家も絡んでいるだろうから、栗本家として正式な抗議を申し立てている。お前をこれだけ長い時間苦しめたんだ。俺としては裁判沙汰もいとわない覚悟だ。いくら幼馴染とはいえ庇うつもりはない」


きっぱりと言い切るその目にはなんの躊躇いもなかった。

その毅然とした態度に深い愛情を感じ、ゆっくりと首を横に振った。


「ううん、もういいの。櫂人さんの気持ちがちゃんと伝わったから」


「藍?」


「きっと上田さんは櫂人さんを本気で好きだったんだと思うの。それをいきなり私に奪われて憤る気持ちもわかるから」


好きな人をあきらめなければいけない悲しみや苦しみは痛いほど理解できる。

それもずっと結婚を夢見てきた相手だとしたらそれはどんなにつらいだろう。

櫂人さんと想いが通じた私が口にすべきではないかもしれない。

でも上田さんにはどうかこれから先の人生で想いあえる人に出会ってほしい。

いい子ぶるわけでもなく今は心からそう思う。
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