マリオネット★クライシス
考えてみれば……
旅行中だっていうのに、妙にこっちに都合よく付き合ってくれたよね。
そもそも出会いの場所だって、観光とは無縁の所で、
“今夜の用事”っていうのも、何かよくわからない。
おまけにセレブかもってくらい、お金持ってる雰囲気で……
確かにキスはされた。
まるで恋人みたいに。
けどそれくらい、演技だって割り切れば誰にだってできる。
わたしも本人に言ったじゃない、俳優になったらって。
彼ならきっと、簡単に演じてしまうはず――
立っているのがつらくなってきて、耐えるようにギュッと、体の横で拳を握り締めた。
ひょっとして……あの男の人たちから逃げるため?
カモフラージュのために、わたしと一緒にいた?
わたし……騙されてたの?
「あれ、ユウお帰り。遅かったな……って、もしかしてそれクレープ? 買ってきてくれたんだ?」
弾んだ声音が聞こえて、ベンチのすぐそばまで来ていたことにようやく気付く。
「あ、うん……」
「食べていい?」
「も、もちろんっ、どうぞ」
「ありがと。ユウも座れば?」
クレープを受け取ったジェイに目線で示された場所へ、わたしはぎくしゃくと腰を下ろした。