マリオネット★クライシス

モデルにアイドル、俳優に声優に歌舞伎役者まで。
児童劇団時代から今まで、いろんなタイプのイケメンをうんざりするくらい見てきたけど。
初めて、かもしれない。誰かに、これほど目を奪われたのは。

年齢はわたしより少し上、20代半ばくらい?

シャープな印象の二重の猫目、真っすぐ通った鼻筋、口角の上がったセクシーな唇……全部のパーツがバランスよく収まった逆三角形の小顔は、まるで二次元の王子様みたいに整ってる。

両耳を飾るスタッドピアスやイヤーカフ、襟足を遊ばせたメッシュ入りの黒髪でパッと見チャラそうなんだけど、キレイな顔立ちと透明感ある雰囲気のせいか、全体がモード系に昇華されてて。
白Tシャツとジーンズ、斜め掛けのボディバックってごく普通の装いが、ハイブランドアイテムに見えてくるほどだ。

しかも、168センチのわたしがこんな風に見上げてるってことは、180は余裕で越してるはず。これってもう、今すぐ雑誌のカバー飾れちゃうレベルじゃない?

まさかまだ、東京にこんな人がいたなんて。
わたしが猪熊さんなら、間違いなく秒でスカウトしてる。

ううん、もしかすると案外もうどこかの事務所に所属してたりして?
でもこんな美形なら、どこかで噂くらい聞きそうだけど……


「なんか顔赤いな。ほんとに大丈夫?」

心配そうにのぞき込まれ、その瞳が黒というより青みがかったチャコールグレイだと気づいて、再び心臓がきゅ、っと音を立てた気がした。

「はっはい……大丈夫です」

ちょ、ちょっとちょっと嘘でしょ、見惚れちゃうなんて。
イケメンなんて慣れてるはずなのに。

本気で動揺してるらしい自分に自分で驚きつつ、それでもなんとか頭を動かして、この場は早く逃げた方がいいって結論を出した。
顔覚えられちゃったら面倒だもの。

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