マリオネット★クライシス

「あの後ね、もう何年ぶり? ってくらい久しぶりに、お父さんとじっくり話をしたの」

吾妻一家と別れ、病院の廊下を並んで歩きながら、栞はぽつりぽつりと話した。

「女優辞めるかもしれないって言ったら、あっさり『そうか』って。それだけなの。もうちょっと言うことあるんじゃないのって、こっちが焦っちゃった」


――構わんさ。お前を女優にしたがってたのはお母さんだから。

――いいの? わたしが女優を続けていれば、お母さん戻ってくるかもしれないよ?

勇気を振り絞って口にした言葉を思い出す。
そして、その次の父の言葉も……

――もしかして、お母さんが戻ってこないのは、自分のせいだと思ってたのか?

――う、うん……


違うの? と問いかけると、父は大きく息を吐きだし、頭を抱え込んでしまった。


――……そんなわけないだろう。むしろ、悪いのは全部お父さんなんだから。

――え、どういう意味?

――私が言ったんだよ。出て行け、二度と顔を見せないでくれってね。


そうして栞は、初めて知った。
当時、母が妊娠していたことを。

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