マリオネット★クライシス
――栞ももう子どもじゃないから話すけど、あの頃お父さんとお母さんはその……子どもができるような行為を随分していなかった。つまり私の子ではない。
だから、家から追い出した。
お腹の子の父親――おそらくは須藤のもとへ、行かせるために。
これ以上時間が経てばお腹の中で赤ん坊は育ち、人目につくようになり、マスコミはますます面白おかしく騒ぎ立てるだろうから。
それはかなりショッキングな事実ではあったけれど……そういえば、と栞は思う。
静のマンションで奈央とすれ違った時、なぜか母を思い出したのだ。
あれは、彼女の歩き方やファッションが、妊娠中だった別れ際の母と重なったからなのかもしれない。
――お前が女優でいようと辞めようと、お母さんはどのみち戻っては来ない。だから、お前は気にすることなくやりたいことをやればいい。
今まで苦しめて、ごめんな。
父の言葉に泣いてしまったことは、ジェイには内緒だ。
「ねぇジェイ……3年後、5年後、わたしはどこで、何をしてるのかなぁ」
正面玄関から外へ出て、んん、と伸びをしながら言う。
その口調は明るい。
何もない、空っぽな自分。
以前はそれが怖くてたまらなかったけど、でも今は……そこに入れることのできる新しい何かを、信じることができる。
未来を信じることができる。