マリオネット★クライシス
「ひ、引っ越す!? べべつにっそんな、そこまでしなくてもっ……」
「栞はオレと離れて平気なわけ?」
じとっと恨めし気な眼差しが降ってきて、う、と言葉に詰まる。
そんな目で見ないでほしい。
これじゃ、何も言えないじゃないか。
ずるいな、もう。
と膨れつつも、恋人の眩しい程麗しい風貌にボケっと見惚れてしまった栞は、
<ニューヨークの家賃は高いから一緒に住んだ方が安上がり、防犯上も安全で、お義父さんも安心。よし、これで押し通して同棲スタートだ>
早口でつぶやかれた英語を聞き逃した。
「え? 何? 何て言ったの?」
「いーや、何も言ってないよ?」
真夏に不似合いな爽やか笑顔に一瞬黒いものが過ったような……なんなら、悪魔のしっぽがチラ見えたような……
んん? と眉を寄せた栞だったが、
「お土産、ホテルに運んでもらったんだ。渡したいから、早く行こう」
「そんな、気にしなくていいのに」
「――っていうのは口実で、早く2人きりになりたいだけ」
熱く囁かれたセリフで、直前の疑問は秒で吹っ飛んだ。
「あ、あの……えと」
「今度こそ、拒否はさせないからな?」
妖しく流し見られて、「う」と固まる。
イケメンというのは、見つめられるだけで圧がすごいのだ。
こんな人がわたしの彼氏なんて、と未だに信じられない思いで頬が火照ってしまったけれど、それでもなんとかコクリと頷いた。