子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 いや、それ以上に俺の胸を騒がせたのは、不安げながらも期待するような眼差しと、誘惑されてくれるかという甘囁きだ。

 もうすぐで彼女に手を出してしまうところだった。

 後を追ってくるはずなどないと知っていても、部屋のドアに鍵をかける。

 いつまで経っても動悸が収まりそうにない。いったい、俺はどうしてしまったというのか。

 よろよろとベッドに近付いて溜息とともに腰を下ろすと、柔らかなシーツに身体が沈んだ。

 あれが彼女のやり方なのだろうか?

 結婚してからというもの、彼女の生家から聞いていたような悪辣さは見られず、ただ料理が壊滅的に下手なおとなしい人なのだと思っていた。

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