子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 私は保名さんが好きだ。彼の気持ちがなくても、キスをされたいと願うほどに。

 でも、彼は私を望んでいない。

 顔の火照りと連動するように胸が痛み、うまく息ができなくて浅い呼吸を繰り返す。

 こんな思いをするぐらいなら、彼の側にいたいと思わなければよかったと、ようやく思った。



 ◇◇◇



 まるで全力疾走した後のように、心臓が激しく音を立てていた。

 彼女が視界に入らない場所へ逃げたにもかかわらず、まだ、触れた手の柔らかさや温かさ、重なりかけていた唇を湿らせた微かな吐息を、自分の中から消しきれない。

 触れるつもりなどなかったのに、あんな格好で出迎えているのがいけない。

< 113 / 381 >

この作品をシェア

pagetop