子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 今までの話し方を急に変えろと言われても困ってしまうが、保名さんが望んでいないなら努力しなければならない。ほんの少しだけ、保名と呼び捨てできることに優越感にも似た、くすぐったい気持ちが込み上げた。彼をそう呼べるようになるまでは、まだ時間がかかりそうだが。

「私、あなたにしてもらえてうれしかったの。ちゃんとできてたかわからないけど」

「そこは心配するな」

「よかった。……でも、それならどうして謝るの?」

 口調を改めただけで心の距離が近付いた気がして、奇妙な緊張と余裕が同時に生まれる。

 トーストを食べようかと思ったけれど、彼と同じものを食べたくておにぎりに手を伸ばした。

< 193 / 381 >

この作品をシェア

pagetop