子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
「顔が赤いなと思って」

「気のせいだろ」

 逸らされた顔は、やっぱり赤く染まっている気がした。

 保名さんのこんな表情が見られるなんて、少しは私に心を許してくれたと考えてもいいのだろうか?

「私の実家の話なんて聞いてもおもしろくないよ。掃除か、着物の整理か、そのぐらいしか話せないから」

「俺が知りたいのはおまえがどう生活してきたかじゃなくて、家族の話だ。娘の素行について嘘を吐くなんて、普通じゃないだろ」

 そう言ってから保名さんは、すぐにすまないと言った。

「一応、おまえの両親だものな。普通じゃない、は言いすぎだった」

「……ありがとう」

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