子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 やすな、と口にしようとした言葉は、彼の口付けのせいで喉の奥に溶けていく。

 私に言わせたいのか、それとも言わせたくないのか、その後も保名さんは呼吸を忘れるようなキスで私をぐずぐずに甘やかした。

 どっちにしろ、言えなくても彼は私に数えきれないくらいのキスを贈ってくれるのだ。

 閉ざしていた両足を割られて、間に彼の膝を入れられる。

 服の裾をまくった手が私の背に回り、下着のホックを外そうとした。

「……しまった。またやらかすところだった」

 私に触れる手が止まったかと思うと、保名さんは息を荒らげながら身体を起こした。

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