子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 ここでやめてしまうのだろうか。やっぱりまだ、私を傷付けたからこの先には進めないと引くのだろうか。

 不安が顔に出ていたのか、彼は呆れたように微笑んでから私の頬を指で撫でた。

「今度はちゃんとベッドでしよう。いつ気絶してもいいようにな」

 背中に回っていた手が私を抱き起こし、額に軽く唇を押し当てられた。

「自分で歩けるか? おまえのことだから、もう腰が抜けてたりしてな」

 思わずどきりとしたのは、彼の言う通り、立ち上がれそうになかったからだ。

 保名さんからのキスがうれしすぎて、身体に力が入らない。

「歩けないって言ったら、運んでくれるの?」

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