子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 責めていないから遠慮なく触れてほしいと言ったのは私だが、まさかここまでとは。

 この部屋に響く、保名さんの熱っぽい吐息と少し掠れた声。中途半端にはだけたシャツから覗く胸板と、薄く割れた腹筋。

 琴葉、と乞うように囁く響きが、思い出しただけでも私の身体に熱を生んだ。

 変わったのは保名さんではなく、私の方かもしれない。

 以前は側にいられさえすれば、彼に憎まれていても耐えられると思っていたのに、今はもっと彼に触れられたい、もっと名前を呼ばれたいと欲張りになった。

 早く呼び捨てで名前を呼べるようになりたいけれど、彼を前にすると気恥ずかしくて口にできない。

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