子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
「葛木さんとの生活で贅沢に慣れたでしょうし、弥子に返したくない気持ちはわかるけど。でもよく考えて。琴葉のものなんて、もとからひとつもなかったじゃない」

 膝の上に置いた手が震える。

 うつむく私に、母は優しく続けた。

「弥子があなたのために、一生経験できない貴重な体験をさせてくれたの。感謝どころか、わがままを言うなんておかしいでしょ?」

「もしかして保名さんを好きになっちゃった? あの人、琴葉なんて好きじゃないよ。知らなかったの?」

 え、と顔を上げた私と、猫のようににんまりと細めた弥子の視線が絡む。

< 235 / 381 >

この作品をシェア

pagetop