子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 前者だと言い切れる自分と、淡い希望は持つなと制する自分の声が頭の中で交互に繰り返される。

 うまく息ができない気がして浅い呼吸を吐いていると、物音がした。

 話を終えたからか、弥子が部屋を出て行った音だった。

「ねえ、琴葉」

 残った母がテーブルに肘をつき、恐る恐る顔を上げた私に向かって目を細める。

 弥子にそっくりな目が、彼女の前では見せない激しい感情を燃え上がらせていた。

「私、ずうっとあなたが嫌いだった。だって邪魔だから」

 穏やかで静かなのに、毒のある声。私の喉を締め付けていく。

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