子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
「弥子のために、保名さんと別れて」

 母が頭を下げて、額をテーブルに付ける。

 私には是とも否とも言えなかった。



 実家から帰宅した私は、ぼんやりしながら保名さんに電話をかけていた。

『もしもし、琴葉か? どうした?』

 声を聞いてから、彼はまだ仕事中だと思い出す。

「あ……ごめんなさい。ちょっと声を聞きたくなっただけなの」

 本当は母と弥子から聞いた話をしたかったが、自分の中でもまだうまく気持ちを言語化できそうにない。

 そんな状態で仕事の邪魔をするわけにはいかず、曖昧に誤魔化す。

 保名さんは忙しいのか、しばらく私に応えなかった。

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