子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 やがて、苦笑したような声が私の鼓膜をくすぐる。

『ちょうどいいタイミングだったな。俺もおまえの声が聞きたくなってたとこ』

 それを聞いた瞬間、ずっと我慢していたものが込み上げて溢れた。

 この場に保名さんがいなくてよかった。突然泣き出した私を見たら、驚かせてしまう。

『今日は早く帰る。食べたい和菓子があるなら聞いておこうか?』

「ううん、大丈夫。なにを持って帰ってきてくれるのか、わからない方が楽しくて」

『それもそうか。じゃあ、今日も楽しみに待ってろ』

 うん、と言ったつもりが、涙が喉に絡んで声にならなかった。

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