子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 気付けば私も列の誘導をしたり、並んでいる人々に注文を取ったりしながら、戦場とも呼ぶべき中に身を投じていた。

 途中、保名さんが私のもとに来て申し訳なさそうにしていたけれど、なにもできないと思っていた自分が役に立てるのがうれしくて、そのまま仕事を手伝わせてもらった。

 彼が普段、お世話になっている人々と接せられる絶好の機会というのも私にとってはありがたかった。

「いやあ、久々にここの栗餅を食べたよ。地元を離れてからは買いに来れなくなってね」

 年配の来場者に話しかけられ、さっき回収しておいたチラシを差し出しながら笑いかける。

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