子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 挨拶回りの時間なんてそう長いものではないだろうに、どうやってそんなにも親しくなったのだろうと疑問に思っていると、顔に出ていたのか、保名さんが説明してくれた。

「昔からうちの和菓子の大ファンだったらしい。今日はうちが出店すると知って、なにがなんでも感想を伝えに行くって決めてたそうだ」

「そういえば久黒庵が催事に出店するようになったのは最近のことなんだっけね」

「俺が本格的に口を出すようになってからだから……そうだな、ここ一、二年か」

 そんなふうに話していると、やはり社長自ら蕎麦を運んできた。

 さっくりと揚がった天ぷらと、こんもりと盛られた蕎麦に、自然と喉が鳴る。

< 273 / 381 >

この作品をシェア

pagetop