子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
「琴葉は今まで一度も、家族の悪口を言わなかった。同じように傷付けた俺も責めなかったぐらいだ」

 押し殺した声を聞き、苛立った様子を見せていた弥子がびくりと肩を震わせる。

「本当はあの程度で済ませたくなかったんだ、俺は。いっそ事業を乗っ取って潰してやろうかとも思ったし、二度と業界に顔を出せないようにしてやろうとも思った。そうしなかったのは、琴葉が『ひどいことはするな』と俺に言ったからだ。彼女に感謝こそすれ、罵るなんてもってのほかではないですか?」

 彼がそれだけのことをできる人物だと、実際に呉服屋を営み、仕事振りを耳にしている父はわかったのだろう。

 母も青ざめた顔で口を閉ざしている。
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