子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
「おまえの趣味に俺を付き合わせるなよ」

 琴葉が笑っていると、なんだか胸の奥があたたかくて気持ちがいい。

 彼女の腰を支えていた手を背中に滑らせ、髪を撫でてから後頭部に添えた。

 そのまま軽くこちらへ引き寄せると、やっぱりおとなしく従う。

「いいのか。このままだとキスするぞ」

「……目、閉じた方がいい?」

「好きにしろ」

 もしかしたら琴葉には俺を拒むという選択肢がないのかもしれない。

 嫌なことがあったらそう言ってくれればいいのに、と思いながら、そっと彼女の唇を奪う。ほんのり香ったのは、食べたばかりのガトーショコラだ。

「苦いな」

「ううん、甘いよ」

< 321 / 381 >

この作品をシェア

pagetop